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豊後大野市大野町の土師地区では、超高齢化、人口減少により、地域コミュニティを維持することが難しくなってきている。そこで建築学科「環境・地域創生コース」のメンバーが中心となり、小規模集落が抱える課題を学生の視点で解決することにチャレンジ。何度も土師地区に足を運び、地域の皆さんと語り合い、農作業やイベントなどを手伝うことで見えてきた、「必要なこと」とは…。

小規模集落が直面する、
さまざまな問題に戸惑う。

「ふるさと体験村」の宿泊ケビンと、竪穴式住居。大分県内でも河川プールを併設した宿泊施設は珍しい一方、運営や維持管理には人手が必要。 ▲「ふるさと体験村」の宿泊ケビンと、竪穴式住居。大分県内でも河川プールを併設した宿泊施設は珍しい一方、運営や維持管理には人手が必要。

土師(はじ)地区の人口は200人弱。高齢化率67%のこの小規模集落では、年々、地域コミュニティを維持することが難しくなっている。そこで、NBU建築学科では環境・地域創生コースの学生を中心に、土師地区を定期的に訪問し、地域住民とともにコミュニティ維持活動に取り組んできた。3年前、同地区で活動を始めた学生たちは、自分たちが普段生活するフィールドとの違いに戸惑いを隠せなかった。高齢者にとって貴重な移動手段であるバスの運行は1日に数本程度。地域のシンボルとなっている施設である「ふるさと体験村」は老朽化が進んでいる。
 1年目。不慣れなこの土地で、何を考え、どのようなカタチで地域の皆さんとつながっていくことができるのだろう。すべてが手探りの中、学生たちは決意する。「まずは地域の営みを知るために、地域の皆さんとともに汗をかくことから始めよう」と。普段、地域の方が行っている作業内容や道具の使い方を学び、いざ現地へ。
 腰を屈めたままで長時間続ける草むしり、足場の悪い中で行う木の枝打ち作業、想像以上の重労働である稲刈りやかけ干し作業、体験したからこそ実感できた地域で生活することの大変さ、厳しさ。作業の合間に「こうして若い人が手伝ってくれるから、ワシも、もう少し頑張れる気がしてきたわ」とおじちゃんに声をかけられ、胸に熱いものがこみ上げる。
 作業終了後は、地域で収穫された農産物でつくっていただいたおにぎりや豚汁を囲んで昼食会。一緒に汗を流した後だからこそ、地域のみなさんとの会話も弾む。

初めて手にする草刈り機。地域の方に使い方を教えていただく。▲初めて手にする草刈り機。地域の方に使い方を教えていただく。

地域の方の言葉で知る、
小規模集落で生活する大変さ。

「ふるさと体験村」開村式での河川プールへの鮎の放流。つかみ取りに向け、子どもたちから歓声が上がる。▲「ふるさと体験村」開村式での河川プールへの鮎の放流。つかみ取りに向け、子どもたちから歓声が上がる。

翌年、土師地区での体験交流活動はさらに活性化する。サマーシーズン目前、「ふるさと体験村」の開村式に向け、何日もかけ宿泊施設内や河川プールの補修、整備作業を実施。滝のように流れ落ちる汗を拭うことも忘れ、炎天下の中、朝から夕暮れまで、黙々とプールの土砂出しや清掃、ペンキ塗りを続ける彼らの姿がそこにあった。
 迎えた開村式当日。運営スタッフとして参加した学生たちが目にしたものは、たくさんの子どもたちの弾けるような笑顔。鮎のつかみ取りや餅つきなどのイベントも盛り上がりをみせ、「こんなに賑やかなのは何年ぶりやろか」と地域の皆さんも驚いていた。
 体験交流を通じて培われた地域住民との絆。そこから本当に地域の方々が必要としているもの、解決すべき課題を発見するために、地域住民へ直接インタビューを実施。「古民家の魅力発見」、「空き家対策」、「地域の生活維持対策」チームに分かれ、じっくりと話を聞く。農作業を手伝い、地元のイベントをともに盛り上げたからこそ築けた信頼関係。「ふるさと体験村をもっと活用してほしい」、「増え続ける空き家をどうすればいいだろう」…寄せられるたくさんの声。その課題について、チームのメンバーと解決策や今後の方向性を夜遅くまで話し合った。

河川プールのペンキ塗り。長時間腰を屈めての作業は重労働。▲河川プールのペンキ塗り。長時間腰を屈めての作業は重労働。
「ふるさと体験村」開村式当日、少しでも開村式を  盛り上げようと、学生たちもスタッフとしてお手伝い。▲「ふるさと体験村」開村式当日、少しでも開村式を盛り上げようと、学生たちもスタッフとしてお手伝い。

信頼関係があるからこそ、
本音と本気で向き合える。

必死に活動する学生の姿に、地域の方々との距離も縮まる。▲必死に活動する学生の姿に、地域の方々との距離も縮まる。

そして翌日、学生たちは地域住民の方々へ課題解決に向けた提案発表会を開催。「ふるさと体験村」をPRするホームページ制作、コミュニティバスの活用策、古民家を民宿や休憩所として利用するアイデア…若者ならではの視点から提案されるユニークなアイデアの数々に、真剣に耳を傾ける地域の方々の姿が印象的だった。土師地区での活動はもちろん今も続いている。建築学科のメンバーならではの「ウッドデッキの改修プロジェクト」では、デザインから設計、原価管理、施工までを自分たちですべてやり遂げるのだ。さらにこの土師地区をモデルケースに小規模集落が抱える問題と解決策をまとめ、大分県知事への発表、意見交換会を行った。
 自分たちのことを頼りにして、待ってくれている人がいる。地域の皆さんのために…ではなく、地域の皆さんとともに。学生たちだからこそできる活動は、まだまだたくさんあるようだ。

▲「ふるさと体験村」宿泊ケビンの改修作業。▲「ふるさと体験村」宿泊ケビンの改修作業。
土師地区の元郵便局。過疎化で廃止となったが、学生の提案をきっかけにカフェへと生まれ変わる。▲土師地区の元郵便局。過疎化で廃止となったが、学生の提案をきっかけにカフェへと生まれ変わる。
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