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少子高齢化が進む大分県内において、今、大きな注目を集めているのが最新の技術やシステムを活用した「高齢者のためのものづくり」。そこには健康寿命の促進や徘徊防止といった高齢者のケアだけでなく、高齢者と共につくる地域コミュニティ、未来の社会のカタチなど、安全で快適な「日本の未来」につながるヒントがたくさんあるようだ。

 

ものづくりを通じて、
元気と笑顔を届けたい。

 

高齢者と同じ目線で、一緒に作業を行う学生 ▲高齢者と同じ目線で、一緒に作業を行う学生

 

豊後大野市にある施設より、「高齢者の介護予防や認知症予防のために体操や音楽の他に、何か新しいレクリエーションがないものか」と相談を受けた情報メディア学科の学生たち。身体機能の維持・向上、脳の活性化、コミュニケーションの促進や生きがいにつながる、手先や指先を使う作業を組み込んだプログラムをメンバーで検討するなかで、これまで学んだプログラミングの知識を活かし、子どもたちに向けて開発・実践してきた「ものづくり教材」を高齢者向けにアレンジし、ものづくり教室を行うことになった。
「目で見て、耳で聞いて、触って操作して、楽しめる」をテーマに、電子オルゴールと電子サイコロを制作。早速、施設に出向き、高齢者の皆さんに実際につくってもらうことに。「こんなに小さな部品でつくれるかな…」と弱音を漏らす方には、「まずはこの完成品を触って、遊んでみてくださいよ」と背中を押す。すると「ここを押すと音がでるわ」、「面白そうだからつくってみたい」と笑顔が溢れ、目が輝きはじめた。通常はハンダゴテを使う部分もすべて、火傷などの危険防止のために差し込み式に。組み立ての際は、学生が寄り添い、困りごとや作業サポートを行うなど、できるだけ高齢者の不安や負担を少なくするよう心がけた。

学生たちが試行錯誤を重ね、制作した電子サイコロのキット▲学生たちが試行錯誤を重ね、制作した電子サイコロのキット
完成した電子サイコロ▲完成した電子サイコロ

 

もっと楽しく、分かりやすく。
広げよう、ものづくりの輪。

 

一回目の「ものづくり教室」を経て寄せられた声。意外だったのは、当初、懸念していた小さな部品を組み立てることへのストレスを高齢者の皆さんはあまり感じてはいないということ。そのかわり、「部品ごとを識別することの分かりづらさ」を感じる作業があることが浮き彫りになってきた。「自分たちにとっては簡単なことでも、お年寄りにとっては難しかったり、迷うことがあるのでは?」とパーツを見分けやすくするために、はっきりと色分けしたり、長さを変えたり、配列を変更したりと工夫を重ねながら教材の改良を進めた。さらに、高齢者とのコミュニケーションについても、作業だけを見守るのではなく、なるべく相手の目を見てゆっくりと話しかけたり、説明を聞いている高齢者の方々が不安な表情をしていないかなど、より細やかな対応をメンバー全員で心掛けた。
続く二回目のものづくり教室では、地元、豊後大野市の子どもたちと一緒に、電子サイコロ作りにチャレンジ。子どもたちと高齢者の間に学生たちも加わり、コミュニケーションをとることで、次第に緊張がほぐれてゆく。ふと気がつくと、学生だけでなく、高齢者の方が子どもたちに作り方を教えたり、手伝う姿も…。子どもたちを対象としたプログラミング教室などもサポートしている学生メンバーのひとりは笑顔で語る。「子どもたちと高齢者の方が“ものづくり”の楽しさでつながり、ひとつの輪ができる。そんな社会になればいいなと思います」。高齢者に楽しさや生きがいを届けるためのものづくり教室は今、地域のつながりや世代間交流へとさらに可能性を広げている。

子どもたちに作り方を教える高齢者の姿も…▲子どもたちに作り方を教える高齢者の姿も…

 

最新技術とアイデアを融合し、
高齢者の安全と健康を支える。

 

最終公開審査では「ウェルステッキ」が地域の見守りにつながることをしっかりとプレゼン▲最終公開審査では「ウェルステッキ」が地域の見守りにつながることをしっかりとプレゼン

 

日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス部門主催「フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2017」にチャレンジした情報メディア学科のチーム「neto3」。少子高齢社会を背景にユニバーサルなデザインや人に優しい技術を結集した「ものづくり」を競うこの大会において、彼らが考案・制作したのが、杖を持って歩くことで、地域とのつながりや高齢者の生きがいを創る「ウェルステッキ」。このアイデアは、メンバーが継続的に取り組んでいる、過疎化が進む大分市木佐上地区との交流もきっかけのひとつとなっている。高齢者の声に耳を傾けることで、メンバーはあることに気づく。それは「働く現役世代に支えられる高齢者」ではなく「高齢者も現役世代と共に地域を支える」ことが大切だということ。そこで高齢者にとって歩行をサポートする杖に、地域住民が相互に支えあえる地域コミュニティの形成を補助する機能をプラスした、地域見守りネットワーク形成補助具「ウェルステッキ」を考案。特殊内蔵カメラや加速度センサマイクを内蔵し、近づいてくる車などの危険を通知、筋肉の動きや足裏の圧力変化など「歩き」のデータ取得など、高齢者の安全・健康サポートを実現するアイデアをカタチにしていった。

3Dプリンタなども使いながら試作品を制作▲3Dプリンタなども使いながら試作品を制作
「フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2017」で佳作と協賛企業賞を受賞したチーム「neto3」のメンバー▲「フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2017」で佳作と協賛企業賞を受賞したチーム「neto3」のメンバー

 

絆とつながりが生まれる、
魔法の杖が地域を変える。

 

「ウェルステッキ」のアイデアは、審査員から高く評価され、最終公開審査へ。佳作及び協賛企業賞も受賞した。「高齢者だけでなく若者への活用方法を」、「ステッキの高さ調節ができるとよい」など実用化に向けてのアドバイスが審査員から寄せられた。なかでも注目されたのは、この杖が高齢者を「支える」だけでなく、杖を持って出歩くことで、つながりのある魅力溢れるコミュニティが生まれるスキームを有している点。利用者が外出先で得たデータが地域で共有されることで、仕事をしている現役世代がリアルタイムで高齢者の状況を見守ることができるのだ。杖周辺の動画像、利用される杖の本数が増えれば増えるほど、地域の見守り範囲が広がり、どの地域で「何が起こった」を見守ることができる。自宅で発生した異常事態の発見や、自然災害発生時の避難経路マップなどもつくることができるなど、さまざまな可能性を秘めている。1本の杖から円を描くように、住民が支え合う循環コミュニティが生まれる。さまざまなカタチや色の円が重なりあい、触れ合うことで、円は、地域で暮らす人と人との「縁」になる。

受賞した「ウェルステッキ」のモックアップ(試作品)▲受賞した「ウェルステッキ」のモックアップ(試作品)
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